野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

4月26日(木)

267793

 作曲工房日記の昨夜のタイムスタンプは3時41分だった。今日は早く寝る(早いというのは、午前3時までに寝るという意味)。

 今日は、5月10日に新宿区四谷の東長寺で開かれる「きあんサロンコンサート」のリハーサルのために、尾崎知子さんが来宅。

 コンサートで演奏されるのは「Morning Air」と「蝿(ハエ)座」。どちらもピアノソロで、ウラノメトリアへの収録予定はない。Morning Airはウラノメトリアと明らかに毛色が異なるので多くの人に頷いていただけると思うが「蝿座」が収録されないことには深いわけがある。

 それは、全天恒星図である本家「ウラノメトリア」には蝿座がないからなのだ。本来蝿座があるところには「蜜蜂座」が据えられている。それなら「蝿座」の曲名を「蜜蜂座」にしてしまえば良いのだが、曲の「蝿座」は誰が聴いても蝿座にしか聴こえないと思う。第5巻に「“ぶんぶんぶん蜂が飛ぶ” の主題による変奏曲」が、蜜蜂座の代わりに収録予定になっている。「蝿座」に負けない名曲だと思っているのだが、どういう評価になるだろうか。

 今日、尾崎知子さんから聞いた話。私の曲で気に入っていただいているのは「9人のフルート奏者のための組曲(1999)」と「フルートソナタ(2007)」の第1楽章とのこと。

 フルートの組曲はとても思い出深い曲だ。フルートアンサンブル「フラッシュ」の皆さんからの委嘱作で、その委嘱の経緯がちょっと怖い。定期演奏会のために他の作曲家に新作を委嘱したところ、その作品が彼女たちのメガネにかなわず私のところにお鉢が回ってきたらしい。「“ボツあり” の委嘱者」なんて、今だったら怖くて躊躇するところだけれど、売り出し中だったので喜んで引き受けてしまった。

「どういう曲をお望みですか?」という質問に対し、返ってきた答えは「きれいな曲」。

 やはり、それだけの条件では今は書けないと思う。若いというのは凄いことだ(翌年の委嘱は、安心して引き受けさせていただいた。完成したのは「Three Dances for 8 Flutisuts」)。

 「組曲」第5楽章の、ちょっと複雑なgigue(ジーグ)は、わずか1分半なのに完成まで100時間以上を要した。しかし、そんなことにびっくりしていたのは若かったからで、今なら100時間以上かかる曲など当たり前という状況になってしまった。フルートソナタは、どの楽章も100時間超えだし、4手ソナタも全楽章も同じだと思う。

 アイディアをまとめるのは、実は速い。素早くまとまらないようなアイディアは大抵クズだ。良いアイディアは主題が勝手に走る。問題は、その後。演奏家やファンになってくれた聴衆は、ひょっとしたら作曲家よりも多い回数を演奏したり聴いたりして、わずかな誤りや欠点を見逃さないかも知れない。だから、曲を徹底的にブラッシュアップしていかなければ怖くて人前に発表できない。

 今までに何回も書いてきたけれど、フルートソナタの第2楽章の初稿は、もっと長い曲だった。3回目の書き直し(3年後の)で長さは半分以下にまで削り落とされ、私の力では、これ以上1音たりとも動かせないところまで推敲して決定稿としたのだった(要するに諦めたということ)。

  

 きあんサロンコンサートの詳細は以下のとおり

2012年5月10日(木)午後3時00分から

「東長寺」内のカフェ・きあん

出演は、“効果音ヴァイオリニスト” の早川きょーじゅと尾崎知子さん。

入場料は2000円。

アクセスは以下のリンクからどうぞ。新宿御苑駅、四谷三丁目(東京メトロ丸ノ内線)、曙橋駅(都営新宿線)各駅より徒歩7-8分。

お問い合わせ・予約は尾崎知子さんのメールアドレスまでどうぞ

tomo-384@triton.ocn.ne.jp

 

 

曹洞宗 東長寺HP