野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

4月27日(金)

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 昨日、今日と長男の “風” の仕事が休みだったので、家事の一部を任せて作業に没頭できた。家事は意外にも時間を食うものだ。特に我が家はごはんひとつをとっても「かため」と「やわらかめ」の2種類を毎日炊かなければならないし、水汲み(純水)も毎日のルーティンワークだ。

 というわけで、今日の前半は楽譜を書期、後半はウラノメトリアの音源をウェブ上にアップロードし続けた。足りない音源はその場で弾いて録音。

 ウラノメトリアの試聴音源も、徐々に4巻、5巻、6巻が揃い始めた。ウラノメトリアでレッスンしている先生方も、第1巻のイメージが強いのではないかと思われるが、ウラノメトリアは計画当初から「ショパンエチュードへの接続」を掲げている。

 ショパンは難しい曲を2種類に分けて示している。ひとつを「アクロバット」、そしてもうひとつは「巨匠の難しさ」と表現している。

 ショパンの言う「アクロバット的難しさ」は、迂闊(うかつ)であれば誰でも作曲できるものだ。ここで言う “迂闊” とは気づかぬこと。“巨匠の難しさ” に気づかなければ、自動的にそうなってしまうことだろう。

 まず第一に “ピアニスティックである” ことを考えてみよう。人の指の数と、指一本一本の長さや形、並び方と鍵盤の配置。これらに適した、つまりピアノで演奏するのに適した音楽を発想しなければ、ピアノにおける最大限の効果を得ることは難しいだろう。では、ピアニスティックであれば良いのか、というとそれだけでは足りない。名曲にはそれを弾きこなす楽しさがある。ピアノ弾きが求めているのは単なる弾きやすさではない。技巧的な弾きやすさと言えばいいのだろうか。投入したエネルギーに等しい音楽美的快感が返ってくるようでなければ練習する気は怒らないだろう。

 駄目なピアノ曲はテンポを上げた途端、超絶技巧になる。ところが、天才作曲家たちは、テンポを上げるとますます効果的になる曲を書く。

 ピアノレッスンのヒントをテーマとした、とあるサイトでは、バイエルが駄目なメソードの代表格として延々とその理由を書き連ねている。それはひとつの見識として認めるとしても、その後がまずい。

「近頃は良いメソードがたくさんあるので・・・」つまり、毎月新しく発売される数多くのメソードが、どれもバイエルよりも上であるような印象を与える表現がある。たくさんのメソードが出版されるということは、それらがどれも決定打ではないことを示しているのではないだろうか。その証拠に、そのサイトでは、具体的な推奨メソードがひとつとして挙げられていない。ただただ、バイエルだけは駄目だと書かれている。筆者のトラウマを見せられているような気がしたものだ。

 妙な言い方だが、実は、どのメソードも決定打である必要はない。それらがみな異なる目的を持っているのならあり得(う)ることだ。そして、そのとおりなら全てが共存することも可能だろう。だが、実際には限りなく可能性は低い。

 あまり過激なことは書けないが、現在使われているメソードの中には、小学校高学年でピアノをやめることを前提としたものもあるのではないだろうか。

 もし、小学校入学時にレッスンを引き受けるとして、その中の何割かの子どもがショパンエチュードまで進むという教室だったら、入門時のメソードにはかなり気を配ることだろう。

 四分音符しか並んでいないような初歩の練習曲からピアニスティックであるということに徐々に気づけるようなメソードであれば、下手な編曲物を弾きたがる子どもは育たないかも知れない。

 バイエルやツェルニー、ル・クーペらの練習曲は、常にその未来(生徒の行く末)を意識して書かれている。実際問題として、それらがあればレッスン教材には困らないくらいだ。ただし、それらに足りないのは20世紀以降に書かれた混合拍子(異なる基本拍節の組み合わせによって成り立つ拍子)や変拍子(拍子が変化することによってアクセントの位置が次々と移動する拍子)、あるいはポリリズムなどが扱われていないことを除けばの話だ。

 ウラノメトリアに欠点がないかと言えば、まだまだ欠点だらけ。しかし、版を重ねるうちにそれらは徐々に解消されていくと考えている。そもそもウラノメトリアが万人向けなのは第1巻αまでかも知れない。それ以降は、ピアノとウラノメトリアに夢中になった人たちのための教材とも言えるだろう。

 

 とにもかくにも、試聴できる曲が増えたので、各巻へのリンクを用意します。第1巻βと第4巻以降は未刊。

α(アルファ)は各練習曲に通し番号が付された、ウラノメトリアのメインストリーム。

β(ベータ)は、コンサートレパートリー集でαの追加練習曲という性格。

γ(ガンマ)は4手、または2台ピアノ作品だけの曲集。

昨日、蝿座のところで話題に出した「ぶんぶんぶん蜂が飛ぶ」の曲は第5巻αの「主題と変奏」という曲。5巻を開いて、曲名をクリックすれば聴けます。

試聴できる曲は、まだ一部ですが、これから増やしていきます。

 

 

ウラノメトリア第1巻α目次

ウラノメトリア第1巻β収録予定曲一覧

ウラノメトリア第2巻α(指導者用)目次

ウラノメトリア第2巻α for children 追加エチュード 一覧

ウラノメトリア第2巻β目次

ウラノメトリア第3巻α目次

ウラノメトリア第3巻β目次

ウラノメトリア第3巻γ目次

ウラノメトリア第4巻α収録予定曲一覧

ウラノメトリア第4巻β収録予定曲一覧

ウラノメトリア第5巻α収録予定曲一覧

ウラノメトリア第6巻α収録予定曲一覧