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虚(うつ)け者と言われそうだが、今朝布団に入ったのは朝の5時だった。
しかし、なんといっても一番節約したいのは時間なので、今日はカミさんと一気に5ヶ所を巡った。
そこでいきなり鉄道の運転中止と遅延。埼京線は人身事故のために、各駅に1編成ずつが停車していて運転開始の見込みが立たないというアナウンス。仕方がないのでやってきた下り電車(目的地と逆方向)に乗って武蔵浦和駅に出て、武蔵野線に乗り換え、さらに南浦和駅で京浜東北線(この線も遅延中)に乗り換えて、ようやく東京駅に向かった。武蔵野線で北朝霞に向かい、総武東上線の朝霞台駅から池袋を狙う手もあったが、それは後知恵。
最初の目的地は、復元改装された東京駅。
下の写真は南口ドームの天井。
中でも外でも沢山の人が東京駅にカメラを向けていて、おそらく今日一日で、控えめに見積もっても数万回のシャッターが切られたことだろう。
次の目的地は三菱一号館美術館で開かれている「シャルダン展」。静物画の大家、ジャン・シメオン・シャルダンだけの美術展が開かれるのは日本では初めて。シャルダンは絵の数が多くなく、彼の作品をまとめて所蔵している美術館もないため、今回の展示のために世界中の美術館から絵を借り受けなければならなかった。キュレーターの方々も苦労したに違いない。
実際、過去にシャルダン作品を観たのは1回の美術展に1作品が出ているというようなものだけだったので、今回はちょっと興奮した。
我が家にもシャルダンの作品は、ジャン=クリストフ・バイイの「西洋絵画の流れ」に1枚あるだけ。高校生の頃、ファブリ世界名画集を集めていたのだが、シャルダンまで手が回らなかった(シャルダンは第83巻だった)。
銀のゴブレットをモチーフにした作品は2点出品されていたが、私たちは2人とも有名ではない方の、つまり初期の「銀のゴブレット」を持ち帰りたかった。これからフェルメールのように「有名な画家」になるかも知れない。
昼食は100円マックと氷水(0円)。〆て2人で200円。素晴らしい時代が来たものだ。
この節約に力を得て、次に向かったのがブリジストン美術館で開かれている「ドビュッシー、音楽と美術」展。
こちらは美術展としては、それほど特別な印象はないものの、インパクトは大きかった。
例を挙げると、映像第2集に「金魚」(全音版の訳)という曲があり、コンサート・プログラムでも「金色の魚」だったりする。実に訳が分からなかったのだけれど、黒の漆に金の蒔絵で描かれた鯉(ドビュッシー記念館所蔵)が展示されているのを見て氷解。正確なタイトルは「金蒔絵の鯉」だったのだ。
また「ペレアスとメリザンド」の成功が、この作品に魅せられた関係者の情熱と努力の賜物であることもよくわかった。上演者たちが夢中ならば、それは良い公演になるに違いない。つまり、ドビュッシーはそういう作曲家だったのだ。
自筆譜の展示を見ても、そのカリグラフィックな美しさはドビュッシーの人柄を偲ばせるに充分だった。
ドビュッシーが写った写真も数多くあり、中にはストラヴィンスキーやサティとの2ショットがあって、かつて読んだ彼の評伝に書かれていたエピソードを次々と思い出したのだった。
いろいろな楽譜の初版も展示されていたが、その装丁も素晴らしくて、ドビュッシーの周囲に才能ある美術家たちが集まっていたことを改めて感じた次第。シャルダン展同様、ファンならずとも行く価値のある美術展。
4番目は書家の古谷蒼韻(ふるたに・そういん)の米寿を記念して開かれている書道展。こちらは招待券で入場。
大家の書道は難しくてさっぱり分からん、というマンガのような結末。分かる人は、きっと感動しているのだろうなと思いつつも分からないものは分からなかった。「2000枚を書いて、56枚を得た」などというキャプションを読むと何やら凄いらしいということは分かったけれど、門外漢というのは、かくも孤独なのかと再確認したに留まった。
最後の目的地は日本橋三越。かつて何度も見てきた天女(まごころ)像を、またまた見に行くというカミさんのプランに乗った。
作者は佐藤玄々(さとう・げんげん)。1960年に完成、高さ11m。こどものころには大仏級のサイズに思えたけれど、大人になるに連れてどんどん小さくなっていった(それでも充分大きい)。
カミさんは「子どものころには色鮮やかで美しかった」と昔の印象を語った。子どもの私には天女に見えなかったので、ただただ怖いだけだった。写真は1階から撮影したものだが、私達が眺めたのは3階正面から。
そしておまけの写真。東京駅八重洲中央口前の交差点で信号待ちをしていた時に撮影。シャッターを切って振り返ると、同じ被写体を狙っていた大柄の中年の白人男性に「おお、お前もか!」という感じで声をかけられた。
帰宅途中の埼京線車窓から撮影したヤコブの梯子。実際にはもっと広がっていて、フレームに入りきらないほど見事な光のシャワーだった。
体力の限界。もう寝る。