野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

6月9日(土)光明寺コンサート

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 上海から一時帰国して絵里子さんが出演した「光明寺コンサート」から返って来たところ。

 港区神谷町の、東京タワーのすぐ足元というロケーションにある浄土真宗の光明寺で行なわれた「Mitoko with Friends」という副題のある「光明寺コンサート2012 Summer」。

 作曲工房一門全員に声をかけるべきコンサートだった。(といっても満席で座席に余裕はなかったのだけれど)

 もし、来年も開かれるようなら情報が入った瞬間全席買い占めか?(それは迷惑というものだ)

 ヴァイオリニストの佐藤美都子(さとう・みとこ)さん(現在、上海在住。元・京都市交響楽団)を中心に集まった演奏家の皆さん、同じくヴァイオリニストの小森文子さん(安宅賞受賞、東京ゾリステンなどで活動)、ヴィオラの川口幸子さん(バッハ・コレギウム合奏団などで活動)、チェリストの小澤豊さん。ピアニストの佐藤鈴子さん(ドイツを中心に活動後、現在聖徳大学音楽学部、大学院音楽文化研究科教授。ここまで芸大同窓生)、クラリネット奏者の伊藤仁美さん(プロフィールにではウェブデザイナークラリネット奏者を兼ねるパートタイム演奏家)、二胡と中国笛奏者の五箇由紀子さん、そして絵里子さん(今回はソプラノ歌手と編曲家)という布陣。

 冒頭のモーツァルト弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575が始まった途端、猛烈なジャブ攻撃に圧倒された。パーマネントなカルテットではないはずなのに、この見事に前進していくアンサンブルは何なんだ、という印象。4人とも私よりも年上?(違っていたらごめんなさい、本当にごめんなさい)

 とにかくベテランの風格。この音は本当に畳敷きのお寺の本堂で出ている音なのだろうかと、周りを見渡してしまうほど。

 2曲目のブラームスクラリネット五重奏曲 ロ短調 第一楽章で、ついに右ストレートパンチをくらってノックアウトされてしまった。クラリネットの伊藤仁美さん、素晴らしい音色(お寺の本堂の響きはマイナスに作用しているはずなのに)。

 3曲目はショスタコーヴィチの「2つのヴァイオリンとピアノのための5つの小品」から「1.プレリュード」「4.ワルツ」「5.ポルカ」。帰宅してから調べてみると、プレリュードは作品97aの「組曲“馬あぶ”」から、ワルツは作品36aの映画音楽、または作品36bの組曲「僧侶と労働者バルダの物語」から、ポルカは作品39の組曲「明るい川」からの編曲。

 ここまでの3曲のプログラミングだけでも見事。演奏家たちの力を出しきるに充分なものだった。

 

 ここから25分間のティータイム。お寺のテラスから仰ぎ見る東京タワーが霧に包まれて幻想的。こんな強烈な被写体があるとわかっていればカミさんのカメラを借りてきたのに。偶然にしても、お膳立てが凄すぎる。それにしても実際と写真が違いすぎるぞ。もっとぼんやりとして、しかも眩しい感じといえばいいだろうか。もっと巨大感があって、ムラムラと匂い立つ東京タワーという感じだった。

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演奏会終了時にはライトアップがブルーに変わっていて、その、あまりの夢幻世界ぶりに叫んでしまいそうだった。

 

 長くなってしまった。後半はペースを上げる。

 休憩後、第2部。

 中国笛と二胡。中国笛の特徴はBBフルートと同じで、共振する薄い膜があること。というより、BBフルートは中国笛からの発想だったのかと、今夜知った。7000年の歴史があるということだった。二胡の曲は新疆ウイグル自治区のタジク族の民謡を基にした変奏曲ということだった。昨日の日記に書いたように、同じペンタトニックでも、日本とは発想そのものが異なる独特の音楽だった。

 そして次が絵里子さん。山田耕筰の「鐘が鳴ります」、中田喜直の「サルビア」、エンニオ・モリコーネの「Nella Fantasia」。良い選曲だった。

 トリは佐藤美都子さん、ピアノの佐藤鈴子さんと絵里子さんのトリオでサティの「お前が欲しい」、ガーシュインの「サマータイム」。これが圧巻で、会場からは大きな拍手。

 美都子さんが、マイクを手にとって「弦が(第1部がという意味か?)かすんでしまいましたが・・・」と謙遜しながらアンコールがリベルタンゴであることを告げると、ますます大きな拍手。

 そういえば、絵里子さんもアンコールで「浜辺の歌」を歌ったのだけれど、リベルタンゴの前だったかも。

 どこにこんな名人たちが隠れていたのだろう(私が知らないだけか?)と思うようなコンサートだった。

 最後に、光明寺の住職の方が美都子さんとの光明寺との関わりをお話してくださった。なんと美都子さんは芸大時代、このお寺に下宿していたということなのだった。「普通だったら、みとこちゃんなんて呼ぶような年齢だったのに、当時から “みとこさん” と呼んでしまうような風格がありました

」というお話に素直に納得してしまった。

 絵里子さんにお願いして美都子さんに紹介してもらい、お礼を述べて光明寺を後に。

 ヴァイオリン・ソナタの初演者は彼女かも(もし、弾いてくださればの話だけれど)。

 こんなことはしていられない。早くウラノメトリア1β、4α、4βを仕上げて、次の仕事だ。

 ダ〜〜〜〜〜!