野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

5月12日(土)

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 ウラノメトリアの試聴ページへのアクセス数が実にバラバラであることが興味深い。

 実際に聴いてみるまで、どのような曲であるのか分からないはずだから、とりあえず聴いてみようという動機があれば、そこそこ各曲へのアクセスは数が揃うような気がする。しかし、アクセス(再生数)が3〜5回という曲があるかと思えば、アップロード後一日で数十回も再生される曲もあるという具合だ。

 考えられる理由は2つ。

 ひとつは、ウラノメトリア試聴ページに通ってくれている人が3人しかいない場合。とりあえず、その3人は全曲を聴いてくれたとして、あとは気に入った曲をくり返し聴いてくれているということになる。

 もうひとつは曲名で判断して再生する場合。しかし、これも可能性は低そうだ。なぜなら、公開してからわずかの間に再生数が増えたのが「なわとび」「スピカ」「こきりこ」「ストラヴィンスキーふうに」。

 「なわとび」というタイトルが人を惹きつけるとはあまり思えない(案外、縄跳びはブームだったりするのかも?)。

 

 今日も3つの「気持玉」をいただいた(ありがとうございます)。

1β_こきりこ 「なるほど(納得、参考になった、へー)」を2個。

番外_スピカ 「驚いた」を1個。

 「驚いた」は最大級の賛辞と受け取ってよいのだろうか。構成には難があるけれど、発想は良い曲だと思っている。足りないのは作曲者の私の力だ。

 

 ウラノメトリアには、ウラノメトリアのために作曲した曲と、他の曲集から持ってきた曲がある。恒星の名前がついている曲は、その多くが「星のカタログ」から。

 一番古い曲が1980年に着想を得た「シリウスB」。次が1984年の「フォーマルハウトについて」、そして1995年の「スピカ」。ただ1曲、ウラノメトリアのために書いたのが2012年の「カノープス」。

 パフォーマンスとしては「シリウスB」が良くできていると思うが「カノープス」の雄大さも捨てがたい。

 カノープスは、ウラノメトリア星図では「りゅうこつ座アルファ」。学名はラテン語だが、カタカナで書くと「アルファ・カリーナエ(りゅうこつ座はカリーナ。その所有格がカリーナエ)」。南天にあるので、日本や中国からは南の水平線からわずかに昇るのを見ることになる。本当は白く輝く巨星なのだけれど、厚い大気の層を通過したカノープスの光は弱々しくなり、中国では「南極老人星」と呼ぶ。カノープスを見ると長生きできるという言い伝えがあるほどだ。

 小学生だった頃、カノープスとオメガ・ケンタウリが見たくて、どこへ行けば見えるのかを調べたことを覚えている。後年、石垣島に行った時、重たい双眼鏡を持って行ったのに夜になると曇ってしまって一度も星が見えなかった。

 私が中学生の時に打ち上げられた火星探査機のマリナー7号だか9号が、進路を保つために目印としたのもカノープスだったはず(ちょっとウロ覚え)。

 今回の「カノープス」は、ポロちゃんのお話の部屋に出てくる、宇宙のどこにでも、なんでも配達してくれる三河屋のデリバリー宇宙船「ノストロモ号」が、まばゆいばかりに輝くカノープスをバックに準惑星セドナへ向かって飛んでいるイメージだろうか。PCで聴くと低音が聴こえにくいかも知れないが、実際に弾くと、セコンドの重低音の倍音上に配置されたプリモが重厚に響いてカッコいい。

 ちなみに、先ほど名前が出てきた「ωケンタウリ」は、本来恒星に付すべき名前なのだが、その実態は突出して明るい球状星団を恒星と誤認したもの。肉眼で見ることができる。

 実は、ヘルクレス座の有名な球状星団M13を裸眼で確認したことがある。長野県の山の中。もちろん、天の川は泳げそうなくらいはっきりと見えていて、まさに降るような星空だった。

 「スピカ」がなぜ番外かというと、無駄に長いから。曲の長さというのは短く済むのなら短いほど良い。1時間で表現できる交響曲を1時間20分にも引き伸ばすのはおかしい、と書けば「短いほどよい」の意味がお分かりいただけるかも知れない。逆に1時間かかる曲を30分にまとめてしまうのもおかしいが、普通は長くなってしまうことのほうが多い。

 今回も、スピカの試聴音源をアップするにあたって改訂を試みた。しかし、ちょこっとした作業ではできそうにないくらい錯綜した曲なので、今回は諦めてしまった。とても良い主題なのに、完成させるのは大仕事になりそうだ。

 

 今日は2曲をアップ。

 「プレリュード '85」と「プーランク風に」。前者は、バッハが20世紀に生きていたらこんなふうに書いたかも知れないという曲(バッハがこんなヘボな曲を書くわけがないけれど)。後者は1972年、17歳の時に書いたもの。

ラヴェルの「シャブリエ風に」を気に入って「◎◎風に」を書きたくて仕方がなかった頃だった。ウラノメトリアには「プロコフィエフ風に」と「ストラヴィンスキー風に」、「バイエルのように」「ツェルニーのように」「ショパンエチュードのように」を加えた、少なくとも5曲が存在することになる。

 

プレリュード '85

プーランク風に