野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

8月19日(日)

271035

 

 「プライベートブランド」という単語が何年後に死語となるのか分からないが、現在はスーパーマーケットなどが独自に開発した日用品や食品、調味料などの格安・代替商品を指している。

 私のような作曲家に限らず、格安プライベートブランド商品の恩恵で暮らしてきた人も少なくないことだろう。

 ところが少し前から様子が変わってきた。最初に気づいたのはイオンのトップバリュ・セレクトのプレーン・ヨーグルトが、一流メーカーのものよりも美味しいことだった。黒蜜をかけて食べるだけで至福の時を楽しむことができた。

 最近、パッケージに「モンドセレクション2012金賞受賞」というタグがついていたので驚いた。モンドセレクションという食品評価システムがどのくらい信頼できるのかは分からないが、プライベートブランドが「安かろう悪かろう」というイメージからの脱却を図ろうとしている印象が出来上がった。

 さらに今日、ゆずポン酢醤油にもモンドセレクション金賞受賞のタグがついていた。どうやら本気らしい。

 それらの商品を専門的に作っている本家メーカーは、価格差は品質の差という認識であったと思う。それが徐々に通用しなくなってくるかも知れない。さあ、どうするのだろうか。

 

 実は、今夜の話題はここから。

 今日はYoutubeでハンス・アイスラーの作品を聴いていた。ベルクやウェーベルンと並ぶ、シェーンベルクの高弟であった作曲家である。

 なぜ私がこの作曲家を知ったのかというと、それは高校1年生の時に音楽之友社の標準音楽辞典を買ったからだ。

 買ったからと言って、この1500ページを超える大著の全項目を読むわけがない。それは3800円もしたのだ。当時の3800円は非常に高価だった。だから全部読まないと元が取れないと思って最初のページから読み始めたら、アイスラーは最初のページに出ていたのだった。

 ところが彼の音楽を聴くことは長い間叶わなかった。

 それがどうだろう。Youtubeで検索すればアイスラーの作品がたくさんヒットする。

 ウェブワールドは、まるで情報のプライベート・ブランドではないだろうか(最高級の商品は、まだこれからというところも似ている)。

 インターネット以前の世界では、音楽評論家などの発信側は圧倒的な情報強者であり、受診側は情報弱者だった。

 現在は、そうとは言えなくなってきたが、情報が効果的に利用されているとは言いがたい。

 結局、情報は量ではなくて、何が必要であるのかという“鼻”が利くかどうかにかかってくる。20世紀半ばにマーシャル・マクルーハンが言ったとおりになった。

 シェーンベルクに興味を持っていたために、アイスラーの項目を読んだ時には、それが強く印象に残った。そのようなことが何回か重なり、それが遠因となって、そのすぐ後にフランク・マルタンの作品を聴く機会に恵まれた。彼の「小協奏交響曲」は12音による主題なのに透明に聴こえ、すぐに虜になった。

 ウェブ上に溢れかえる情報から必要なものだけを拾い出す能力こそが、これからのアドバンテージとなることだろう。

 

 ここから先は雑談。

 映画化された(コミック化もされている)のでご存知の方も多いと思うけれど、冲方丁(うぶかた・とう)の小説「天地明察」を読んだ(家族の話題に乗り遅れないため)。

 この作家の文章力が素晴らしい。ネタバレになるから内容については一切触れないが、まるで藤沢周平が21世紀に蘇ってきたかのような筆力だ。念のため、書き添えておくと2人は似ていない。力の高さについて「藤沢周平のように」と書いただけで、2人ともオリジナルである。

 たまたま放送大学関孝和に関する特別講義を視聴して間もないので、余計興味深かった。

 さらにもうひとつメモ。今夜、Eテレのスーパープレゼンテーションの再放送で、再びスーザン・ケインの「内向的な人のパワー」を観た。

 彼女はなんと魅力的なのだろう。1回目に彼女を見た時には話の中味に惹かれて気が付かなかったのかも知れないが、今日は彼女自身を魅力的だと感じた。人間性を磨くことは本当に重要だ。彼女は高齢になっても魅力が薄れることはないだろう。

 

>今日の気持玉

・5α_スケルツォ <ナイス>1