野村茎一作曲工房日記2

作曲家の野村茎一が日々の出来事を綴ります

6月17日(月)

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 今週は予約レッスンが3コマあるので、準備に余念がない。

 レッスンはカッコ良くなくてはダメだと思う(私がカッコ良いという意味ではないので念のため)。

 たとえばレッスンで4度の積み重ねで構成される、いわゆる「4度和声」を扱うとする。

 4度和声は、その結合や運動力学が理論化、ましてや一般化されているわけではない。和声の理論書でもパッシブな分析が載せられている場合が多く、どのように使うかというアクティブな記述はなかなかない。

 こういう時は、実作品から学ぶのが一番。

 そのためには、優れた使用例であると思われる曲(大抵のものがテレビや映画で使われる音楽の部分的なもの)を選んで、もちろん、それらは楽譜など出版されていないから耳コピしてスコアにする。

 そもそも、なぜ4度和声を使う必要があるのか。スクリャービンの「神秘和音」は4度の積み重ねのように見えて実際の性質は属九に近い、というように、問題は単純ではない。

 しかし、何と言っても、最も知りたいのはその使い方。

 過去の偉大な天才作曲家たちが、どのようなセンスで使ってきたかという魅力的な例が、なにより雄弁に語る。

 

 最終的には、音楽に関する全てのレッスンは “耳づくり” に収束する。ピアノも作曲も音楽理論も音楽史も、文字では解決しない。

 独学でも知識ならいくらでも得られる時代になった。しかし(聴こえるための)耳づくりはどうだろうか。

 ここで「聴こえる」と言っているのは「楽器ごとの音」であり「奏者ごとの音」「その曲のために出された音」であったりする。また、音楽の「時系列構造」であり、「動機」や「部分動機」の提示、確保、再現、それらを用いた変奏や和声構造の変化を聴きとることであったりする。

 

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午後から晴れ。